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好きな写真と写真家 汪蕪生(ワンウーシェン) Wang Wusheng 「天上の 山々」


 2000年 東京都写真美術館写真展 Himmelsberge「天上の 山々」で先ず驚きました。理屈抜きに美しい! 凄い! そういう展示でした。写真家汪蕪生氏も在廊で、一言二言お話しました。世界的に評価されている、自他共に認める巨匠にしては、予想より若くて、とても気さくな方でした。

 若い頃、登山に嵌まっていて、岩登りもほんの少しやりました。穂高が好きで、夏も春も登ってます。春とは云え、アイゼン・ピッケルが必要で、北穂が大好きなのですが、実は、親にも報告していないのですが(今となっては報告できないのですが)、北穂の、滑り台のような氷りの面で、少し滑落したことがあるのです。焦りましたが、なんとかピッケルで止まりましたので、今此を書けてます。夏の前穂高北尾根はロッククライミングでした。勾配が160-180度以上もある個所も。そんな体験からか、「天上の 山々」に酷く感激しました(前穂高北尾根は「黄山」の雰囲気が少しあるのです)。其の感情を率直に汪蕪生氏に伝えたと思います。だから、「写真」の前に「山」の関心から汪蕪生氏の写真たちに惹かれました。

 それから17年も経って、写真集を見返すと、ユージンスミスとはまた違った黒白の絶妙なコントラスト、グラデーションにあらためて驚きます。

 西洋と東洋という二分化はしたくありませんが、汪蕪生氏の東洋人(中国人)としての遺伝子を感じさせることは確かかもしれません。基層の心の違いというか、被写体の違いというか。

 水墨画によく喩えられるようですが、水墨画か、モノクロ銀塩写真かは、手段の違いだけであって、風景、乃至、被写体のイメージングであることは両者に共通していることなのでしょう。ただ、そうとはいえ、物理学科出身でもある汪蕪生氏の合理的な、強かな計算も行き届いたモノクロ銀塩写真だと思います。

汪蕪生氏も実は、文革の犠牲者とのこと。かなり悲惨な体験もされているとのこと。日本を写真活動の地にされたことも関係あるのかもしれませんが、そんな過酷な体験の果ての「天上の 山々」なのかもしれません。

 とても大きな歴史の力に真正面から抗するのは大変なことなのでしょうが、そんな巷の人間の右往左往に、「我関せず」と悠然・泰然としている大自然の側の眼から自らを見直してみるというのもひとつの「智慧」なのかもしれません。それこそ、強者、権力者、支配者とは違った弱者、民衆の強かさに見倣うのも手かもしれません。そんなことを考えさせてくれる写真家汪蕪生氏の生と写真でした。マスコミの「北朝鮮」危機報道の渦中で・・。


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