好きな写真と写真家 ブレッソン(Henri Cartier-Bresson 1908-2004) ライカM3 + ズマリット + TX400
- 大塚巧
- 2017年9月11日
- 読了時間: 3分

2007年国立近代美術館「アンリ・カルティエ=ブレッソン 知られざる全貌 De qui s'sagit-il? Retrospective de Henri Cartier-Bresson」のカタログが素敵です。現物を見ると分かるのですが、面白い装丁で、クリアケースに入っていて、其れがとても良いのです。

『決定的瞬間』という言葉があまり好きではないのですが、"The Decisive Moment" よりもフランス語の"Image à la sauvette"「逃げ去る映像」の方が好きです。写真は全て、カメラシャッター故当然、"The Decisive Moment"なのでしょうし、『時間』の本質から見ると"Image à la sauvette"「逃げ去る映像」なのでしょう。
言葉は独り歩きするもので、「決定的瞬間こそが写真であって、決定的瞬間でなければ写真に非ず」という写真の見方は一面的かと思いますし、HCBの写真自体、そんな見方は一貫しないと思います。『決定的瞬間』という言葉と共に紹介されるHCBの写真よりも、其の言葉とは無縁な写真にHCBの本質を見てしまいます。

Srinagar, Kashmir 1948 此の一枚が一番好きです。サルガドの聖なる風景を想起させる静謐な風景です。此を『決定的瞬間』と呼ぶのかどうか。寧ろ、永遠が写り込んだ瞬間なのではないでしょうか。

Ile de la Cite, Paris, 1951 此のイメージもスデクを想起させてくれ、大好きです。『決定的瞬間』という言葉は似合わないくらい、永遠の静止です。

L'Aquila, Abruzzi, Italy, 1951 此も、絵画を想起させてくれます。『決定的瞬間』とは無関係で、凍りついた一瞬かもしれません。

Alberto Giacometti, painter and sculptor, Paris, 1961 此は、『決定的瞬間』かもしれません。面白いです。思わず微笑んでしまいます。此こそ、HCBの『決定的瞬間』なのでしょうか。ライカM3 + ズマリット + TX400 で撮ったのかどうか知りませんが、少なくとも、ライカ + HCB の撮り方ならでは、なのでしょう。
話が逸れますが、公演本番で舞台撮影を銀塩モノクロで撮っていると、シャッター36回毎にフィルムを交換しないといけません。しかも、真っ暗な観客席で周囲の観客を気にしながら。消音バッグの中で手探りで。音を立てずに。。シャッターを押す時も、フィルムの残り枚数を気にしないといけません。肝心な時にフィルム交換なんてことになると、もう地獄の試練です。冷や汗タラタラ。。フィルム交換を意識せずにシャッター押せたらどんなによいだろうと夢見てました。デジタルカメラ時代になって、その夢が事実上実現しました。さて、果たして、銀塩フィルム時代よりもいい写真を、『決定的瞬間』を撮れるようになったでしょうか。例えば、ムービーモードにして連続して撮っていれば、『決定的瞬間』が撮れるのでしょうか。「撮れる」と断言できる人は、間違いなく、少なくとも、HCBとは無縁な人です。『決定的瞬間』は、決して時間連続の過程の「一コマ」では決してないのだと思います。

イメージで喩えると、まぁ、一般的な物理で、時間軸として直線上で時間を示したとして、その線上の一点に『決定的瞬間』があるのではなく、線に交差する線、しかも、複数かもしれない線、面かもしれない、もっと違う多次元かもしれない、そんな複合的なイメージがHCBの銀塩モノクロフィルムの、ライカM3 + ズマリット + TX400の『決定的瞬間』なのだと思います。最新のデジカメや最新のムービーで撮れるイメージとは比較し得ないイメージ、別ものだと思うのです。
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